信頼性解析と不具合の未然防止(2)

 

 次に二つめの手法であるFTAについて説明します.

 

FTA

FTAとは,Fault Tree Analysisの略で,日本語では故障の木解析と訳します.

システムや製品に起きてほしくない事象,例えば自動車ではエンジンがかからない,パソコンでは電源が入らない,といった事象をトップ事象と呼びます.そのトップ事象が生ずるためには何が起こらなければならないか,を考え,その事象の原因となる事象をすべて挙げ,望ましくない事象とそれらの事象との間の因果関係を論理記号で結びます.

 次にそれらの一つ一つの事象についてその事象を起こす原因は何か,さらにそのまた原因となる事象は何かというように展開していき,すべての事象がもうこれ以上展開できないところ(これを基本事象という)まで続けていき,できあがった樹形図をもとに解析を行います.基本事象の発生確率がわかっていれば,トップ事象の発生確率を計算することができます.

 

FTAの一般的手順

 以下にFTAの一般的手順を示します.

 

FTAの一般的手順

(1)解析の対象となるシステムの構成・機能・動作を理解する.

(2)システムについてのトップ事象を選定する.

(3)手順2で定められた事象につながる第1次要因(サブシステムレベル)を列挙し,それらに関連する外部要因も吟味する.

(4)手順3で得られた要因と事象との因果関係を,論理記号を用いて結びつける.

(5)手順3および4を繰り返して,構成品レベルまたは部品レベルと展開し,もうこれ以上分解できないレベルまで続けFT図を描く.

(6)描かれたFT図を見直し,必要な整理を行なう.

(7)FT図の末端の各要因に発生確率を割り付ける.

(8)論理記号に従ってトップ事象の発生確率を計算する.

(9)各要因の上位レベルへの影響のきびしさを評価し,効果的な改善対策を検討する.

 

この手順について,簡単なモーターの回路で説明します.

             図3 回路図

         図4 図3の回路の信頼性ブロック図

 

(1)機能

 スイッチを入れることにより,モータを回転させる.

(2)トップ事象

 「モータが始動しない」を取り上げる.

(3)(6)FT図の作成

 作成したFT図を図5に示す.

(7)(9)発生確率の計算

 本実験では,発生確率の評価は行わなくてよい. 


   図5 「モータが始動しない」をトップ事象にしたFT

 

課題2

上記の事例を参考にして,FTAを理解するためにFMEAと同様に鉛筆削りを題材にしてFT図を作成します.

FTAの実施

(1)トップ事象を選定する.

(2)FMEAで作成した信頼性ブロック図を参考にして,トップ事象を展開する.

(3)すべての事象を基本事象まで展開したら,FT図は完成である.基本事象が,先に作成したFMEAの中の故障モードとどのように対応しているかを調べる.

以上の解析が終了したら,以下の点について考察し,レポートにまとめてください.

(1)FMEAFTAで得られる情報にどのような違いがあるかを考察する.

(2)製品の不具合の未然防止にFMEAFTAをどのように活用したらよいか,について考察する.

 なお,FT図はPowerpointで作成すると容易です.白紙のテンプレートを用いてFT図を作成してください.