2.3 需要予測の基礎

 定期発注方式では、発注量を算出するために何期か先の需要予測値を求めなければならない。 ここでは発注量を算出する場合などに用いられる短期の予測に適した指数平滑法、 安定した需要量を持つような中長期の予測に適した関数式のあてはめ法、 季節などの周期的な需要変動を持つような需要予測に適したEPA法 について述べる。

 2.3.1 指数平滑法

 定期発注方式では、発注量を算出するためには、何期か先の需要予測値を求めなければならない。 指数平滑法は発注量を算出する場合などによく用いられる短期の予測に適した予測手法である。
 この方法は、当期の需要が前期の需要に強く影響される場合(自己相関が強い場合)や、 需要変動の予測値を平滑化し、あわせて需要変動にできるだけ追従させたい場合などに用いられる。 これは過去の需要に何らかの重みづけをする加重平均法の1つであり、 加重の総計が1になるような方法である。
 この指数平滑法はいろいろなタイプが存在するが、 ここではその基本となる単純指数平滑法について述べる。 単純指数平滑法は、数学的に以下の式で表せられる。

0=αd‐1+(1−α)f‐1
f0 :次期の予測値
α :指数平滑化係数(単に平滑化係数)
d‐1:前期の実績値
f-1 :前期の予測値

 この式が示すように、α=1とすると前期の実績値だけで予測し、 それ以降の実績値は無視することになる。 αを1より小さくするにしたがって過去の実績値までが生きてくる方式である。 つまり、予測法はいずれも将来は過去の延長と考えられるわけであるが、重みづけすることは、 過去の要因は時間の経過とともに何らかの変化をしており、したがって将来の予測には、 最近の状態を遠い過去の状態よりも重視しようという考えに立ったものである。

〔ソフトの使い方〕

 手計算

 2.3.2 関数式のあてはめ法

 身長と体重のように、2つの変数XとYが相互に何らかの関係(相関関係)を持っていることがある。 このような2変数の関係を、適当な直線や曲線の関数式によって近似的に表現することを、 関数式のあてはめという。
 ここでは、次の関数式を最小2乗法を用いてあてはめる。

  1. 直線
  2. 分数
  3. ルート
  4. 対数
  5. べき乗
  6. 指数
  7. 修正指数
  8. ロジスティック
  9. ゴンペルツ
  10. 2次関数
  11. 3次関数
  12. 4次関数
  13. 5次関数
出力内容
1.基本統計量 平均、偏差平方和、分散、標準偏差。 2変数間の積和、単相関
2.精度 決定係数、自由度修正済決定係数、重相関係数、自由度修正済重相関係数、 ダービンワトソン比:残差(理論値と観測値の差)の系列相関を示します。残差はランダムでなければいけません。 2に近いときは残差の値がランダムであることがわかっています。
3.関数式 係数、定数項(切片)、上限値(関数式の7から9のみ)
4.分散分析表 回帰変動と誤差変動の分散分析結果
5.理論値 説明変数の値により昇順に並び換え出力。区間推定はオプション
6.相関図グラフ区間推定はオプション

〔ソフトの使い方〕

[目的変数範囲]テキストボックス
 分析を行うワークシート・データより目的変数(Y)範囲の参照を指定します。 範囲内のデータは1列(行)にまとめられていなければなりません。 [先頭行をラベルとして指定]チェックボックスをオフにします。 データの並びは縦方向(列)、横方向(行)の2つより選択できます。
[説明変数範囲]テキストボックス
 分析を行うワークシート・データより説明変数(X)範囲の参照を指定します。 範囲内のデータは1列にまとめられていなければなりません。 [先頭行をラベルとして指定]チェックボックスをオフにします。 データの並びは目的変数に合わせなければいけません。 ブランクにした場合は、1からの整数値を自動的に設定します。 説明変数よりデータが多い場合には、説明変数の長さを越えたデータについて 理論値の計算を行います。 べき乗、指数、修正指数、ロジスティック、ゴンペルツの場合、 桁あふれが発生し分析ができない場合があります。 説明変数のデータを1000分の1にするなど、整数部の桁数を少なくすることで回避できます。
[結果出力ワークシート]テキストボックス
[関数式の指定]ドロップダウンリスト
 上記の1から13までの関数式より、あてはめを行う関数式を選択します。
[上限値の設定]オプション
 上記の7から9の関数式を選択した場合、上限値(k)の設定が必要となります。 設定の方法は次の3通りより選択します。標準設定は公式1です。 ただし、公式を利用して求めたられた上限値が実データの最大値を下回った場合には、 最大値に1.1を掛けた値が上限値となります。
  • 公式1:Yの値を横軸にとり、Yの増分ΔYをYで割った値を縦軸にとり相関を求めます。 そして横軸と交わる値を上限値とします。(この図は出力されません)
  • 公式2:log Yの値を横軸にとり、 log Yの増分Δlog Yを縦軸にとり相関を求めます。 そして横軸と交わる値をlog kが求められこれよりkを導き上限値とします。 (この図は出力されません)
  • 任意の値を設定:目的変数の最大値を越える任意の値を設定します。
[区間推定]チェックボックス
 理論値の推定を、指定された信頼区間の幅で区間推定を行います。 信頼区間は任意の100%未満の値を指定出来ます。標準設定は95%です。

 2.3.3 EPA法

 EPA法(モデル X−4C)は、経済企画庁が開発した手法で、 季節調整を必要とするデータに対して有効な分析手法である。 この手法により、時系列データを次の4つの変動要素に分離する。
・傾向変動(Trend variation) :長期にわたる持続的な変化
・循環変動(Cyclical variation) :周期的な変化
・季節変動(Seasonal variation) :季節的な変化
・不規則変動(Irregular variation):観測誤差など諸要因による変化
当機能では、 EPA法の乗法モデルを計算手法として採用しており、 元の観測値と分解された各要素との関係は、
 観測値 = T×C×S×I
となり、各要素を掛け合わせた値が観測値と一致します。
実際の計算結果では次の4つの値が出力されます。
TCI:観測値に季節調整を行った値
TC :TCIに対し、不規則変動を除去した値(TCI÷I)
:季節変動の指数(元の観測値の期間+1年分を出力)
:不規則変動の指数

〔ソフトの使い方〕

[データ入力範囲]テキストボックス
分析を行うワークシート・データ範囲の参照を指定します。 範囲内のデータは1列にまとめられていなければなりません。 EPA法では、3年間以上のデータ(月次:36行以上、四半期:12行以上)が必要です。 範囲内に数値以外のデータを含むとメッセージを出力し処理を中断します。
[周期]オプション
分析するデータが、<月次>(12ヶ月/年)であるのか<四半期>(4四半期/年)であるのかを選択します。
[開始時期−年]テキストボックス
分析するデータが何年から始まっているかを指定します。
[開始時期−年]テキストボックス
分析するデータが何月または第何四半期から始まっているかを指定します。
[先頭行をラベルとして指定]チェックボックス
[結果出力ワークシート]テキストボックス

[関数式のあてはめと予測]グループ

[関数式をあては予測を行う]チェックボックス
直線、ルート、対数、指数、ロジスティック、ゴンペルツの6つの関数式を、 TCにあてはめ予測を行う場合にはチェックボックスをチェックします。
[予測年数]テキストボックス
何年先までを予測するか、年数を入力します。最大10年まで予測できます。
[上限値]テキストボックス
ロジスティックやゴンペルツをあてはめる場合に必要となる上限値を入力します。 入力した値がTCの最大値を下回る場合には、TCの最大値の1.1倍を自動的に上限値とします。
[予測ライン]オプション
関数式のあてはめはTCに対して行いますが、<TC×S>を選択すると予測されたTCに、 S(季節変動指数)を乗じて、予測ラインを作成します。
[実績期間についても予測値を計算する]チェックボックス
実績期間についても予測値を計算する場合には、チェックボックスをチェックします。 チェックをしない場合は、実績期間の最後の月(四半期)より予測値を計算します。