ロジスティクスとは
ロジスティクス(logistics)という用語に対する定義は様々ありますが,代表的なものの一例として全米ロジスティクス協議会では
以下のような定義を与えています.
ロジスティクスとは,顧客の要求を満たすために,算出地点から消費地点に至る「もの」,サービス,および,関連する情報の
効率的かつ効果的な流れ,保管を計画,実施,管理するプロセスをさす.
この定義は,企業,それも製造業のロジスティクスを念頭においた定義ですが,これをより簡潔に表現すると「材料の調達から,
生産,最終ユーザーへの製品の配達,廃棄/回収までのトータルなものの流れを扱う活動」(高橋輝男他,「ロジスティクス―理論と実践」,
白桃書房,1997)ということができます.

上の図を参考に考えると,ロジスティクスに関連して様々な計画・管理の課題が出てくることが分かると思います.
代表的なものだけでもいくつもの例を挙げることができます:
- 工場や配送拠点をどこに配置すればよいか(施設配置問題)
- 工場から配送拠点,あるいは,原材料調達先から工場にどのような輸送を行えばよいか(輸送問題)
- 工場では生産をどのように計画すればよいか(生産計画)
- 工場では,機械・設備や人員をどうスケジュールすればよいか(スケジューリング)
- 配送拠点から小売店あるいは顧客にどう配送すればよいか(配送計画)
- 工場・配送拠点・小売店などで,製品や原材料の在庫をどう管理すればよいか(在庫管理)
私たちの身の回りを考えても,製品・商品が皆さんの手に届くまでに様々なロジスティクス活動が関与しており,
その計画・管理にロジスティクス意思決定が関わっていることが分かるでしょう.
身近なコンビニやスーパーを考えても,以下に示すようにいろいろな例が思いつくと思います:
- コンビニの弁当や商品をどれだけ用意しておけば,顧客の要求を満足できるか
- できるだけ作りたてのコンビニ弁当を店頭に置くにはどうやって製造現場から各コンビニに配送するのがよいか
- 新規コンビニの出店をどこにすればよいか
- スーパーのアルバイトのスケジュールをどう管理すれば,少ない費用で最大の顧客サービスが提供できるか
このような意思決定にあたって,
- 製品の発注方法をどうすればよいか
- 需要をどんな方法で予測すればよいか
- どんな順番かつタイミングで配送すればよいか
- どんなスケジュールを立てればよいか
などの課題に対して,科学的な方法で適正な計画・管理を行うことが必要になります.経営システム工学ではこれらの科学的な方法を学びます.
製造業を中心にロジスティクスを考えてみましたが,宅配や郵便,また鉄道や航空などの交通もロジスティクスの一環と考えることができます.
英和辞典でlogisticsと引いてみると,
logistics 兵站(へいたん)学(輸送・宿営・糧食・武器・人馬の補給管理・傷病者の処置などに関する
軍事科学の一分野);兵站業務;事業の詳細の計画・実行;(経営)ロジスティックス(企業による物資の総合管理のための研究・手法・戦略・
システムなどをいう) (松田徳一郎編,「リーダーズ英和辞典第2版」,研究社,1999)
と出てきます.辞書によっては,最近使われているような意味での「ビジネスロジスティクス」的な定義は示されていない場合もあることから
分かるように,ロジスティクスはもともと軍事用語で,戦争に際して,戦闘の第一線に弾薬,食糧,兵器などを補充することによって,戦闘を
支援する活動を意味していました.軍事的には「後方支援」という表現も使われています.このような軍事的な意味でのロジスティクスが最近
でも話題になっていることも残念ながら事実ですが,私たちは主にビジネスの観点からロジスティクスを学んでゆきます.
一般に意思決定は,しばしば,戦略レベル/戦術レベル/運用レベルに分類されます.社長さんや重役連中がハラを決めなければいけないのが,
戦略的意思決定で,部長・課長さんレベルの意思決定が戦術レベル,皆さんが大学を出て仕事についたらすぐにでも関わるのが運用レベルの意思決定;
ここでは大雑把にそんな理解をしておきます.上に挙げた様々なロジスティクス意思決定がどのレベルの意思決定に該当しそうか考えてみましょう.
以上をまとめると,ロジスティクスを考えるにあたってのポイントは以下のようにまとめることができるでしょう:
ロジスティクスのポイント
- 「もの」の流れ
- 上流(原材料)から下流(顧客需要,さらには最近では廃棄/回収)まで
- ものの流れを支援する情報
- 顧客満足,効率性,経済性(必要なときに,必要なものを,必要なだけ)